01 Nov 2022 Speech

UNEP国際環境技術センター       30年の歩み

#

インガー・アンダーセンUNEP事務局長スピーチ

UNEP-IETC設立30周年記念メインイベント(2022年10月3日 大阪)

UNEP国際環境技術センター(IETC)は、環境上適正な廃棄物管理の分野において卓越した機関として、今日で30周年を迎えました。UNEPは、日本政府および大阪市から当センターの活動に多大なご支援をいただいていることに感謝いたします。

私たちは廃棄物ゼロへの道のりで節目の瞬間を迎えていますが、やるべきことはたくさんあります。廃棄物は、気候変動の危機、自然と生物多様性の喪失の危機、汚染と廃棄物の危機という3つの地球危機全てに影響を与える問題です。

2020年に排出される22.4億トンの固形廃棄物のうち、約3分の1が環境的に持続可能な方法で管理されていません。

廃棄物が適切に管理されなければ、温室効果ガス、特にメタン、亜酸化窒素、ブラックカーボンを排出します。また、廃棄物は生態系とその機能にも影響を及ぼします。例えば、農業排水は、海洋のデッドゾーンの原因となっています。一方、プラスチックは世界の廃棄物の12%を占め、これはシロナガスクジラの340万頭分の重さに相当します。マイクロプラスチックを含むこれらのプラスチックは、人間の健康被害への潜在的リスクとなっています。

今の傾向が続けば、2050年には廃棄物の量は年間38億8,000万トンに達すると言われています。リサイクル率は世界全体で16%以下であり、3つの地球危機を悪化させないために、私たちが行動を起こす必要があることは明らかです。

UNEPは、行動の枠組みとして、3つの重要なステップを提案しています。1つ目は、廃棄物に対する管理体制を確立すること。2つ目は、環境に配慮した廃棄物管理を実施すること。そして3つ目は、廃棄物を二次的資源と見なし、循環型社会へと移行することです。UNEP-IETCは、COP27議長国によって導入された、2050年までに廃棄物を50%削減する「グローバル・ウェイスト・イニシアティブ」を支援するなど、すべての分野で積極的に活動しています。

今後30年間、UNEP-IETCの影響力はますます大きくなっていくことでしょう。

UNEPはUNEP-IETCの活動を通して、廃棄物に関する世界的権威としての役割を深めていく予定です。UNEP-IETCは、「世界廃棄物管理概況第2版」をまもなく完成させつつあります。廃棄物管理計画がデータに基づいた前向きな計画となるように、調和のとれた廃棄物データシステムの構築に向けて取り組んでいきます。

UNEPはまた、主要な影響とされる廃棄物のライフサイクルに焦点を当て、循環型社会の推進に大きな役割を果たします。これらの取り組みには、廃棄フローを削減し管理するためのソリューションを提供することで、大きな影響を持つセクターの変革も含んでいます。

また、当センターは、プラスチックに関する課題の解決の役割を担っています。プラスチック汚染をなくすための協定について各国が交渉している中、当センターは、目標とターゲットの構築に役立つ科学的データを公表することでその役割を担います。協定が実施される際には、技術移転と能力向上に関する当センターの活動も役立つことでしょう。

皆さん、私たちUNEPはこれからの未来への旅に期待しています。そして、皆さんに参加していただくようお願いします。特に、金融・投資コミュニティーに期待しています。各国は、廃棄物管理とリサイクルに必要なインフラに投資しなくてはなりません。これは、開発銀行、銀行、機関投資家を取り込むチャンスです。そして、プラスチックをライフサイクル全体で考え、循環型社会に必要な市場を発展させるためのデジタル技術に投資する人々にとってもチャンスとなります。

最後に、UNEP-IETCの30周年おめでとうございます。廃棄物ゼロの世界を目指しながら、さらなる30年を過ごせることを楽しみにしています。

ありがとうございました。